海外で日本クラフトの魅力を伝える人たち〜part1〜”オランダshop natsukashiiさんへインタビュー~
皆さんは海外で日本の製品を販売する人、と聞くとどんなイメージを抱きますか?
日本の文化が好きな日本人が売っているのかな?と思い浮かべる人もいるかもしれません。
私がオランダを訪れたのは2023年6月のこと。
その中でも私が会いたいと思い、日本からコンタクトを取ったオランダのロッテルダム在住のCarolaさん。対面でインタビューをさせてもらった。
何を隠そう彼女はオランダで日本のヴィンテージクラフトの製品を扱うネットショップNATSUKASHIIを営んでいるのだ。
彼女のネットショップのセレクトを見てみると一点モノの着物はもちろん、
コケシや重箱、風呂敷などのラインナップが目にとまる。
それぞれの商品ページには丁寧な商品説明が記載されている商品一つ一つを大事にして収集&販売していることがみてとれた。
「amazing!」と思うのと同時に、彼女がオランダ人であることにも驚いたし同時に色んな疑問が湧いてきた。
一番私が関心を寄せたのは「一体どんな人が、どんな想いで販売しているだろう?」ということだ。
アジアの小国である「日本」のクラフト製品を扱うネットショップオーナーであるCarolaさんへ突撃、対談インタビュー。
海外に向けて日本製品を広めたい人や販売したい人になにかのヒントになれば嬉しい。
<目次>
1.NATSUKASHII のお店の始まりやきっかけ
2 . NATSUKASHIIショップのコンセプトや大事にしていること
3.どんなお客様がNATSUKASHIIショップを利用しているのか
4.ネットショップNATUKASHIIががあるオランダについて
5.Carolaさんが語る日本のクラフトや着物の魅力
6. ブランカとCarolaさんが語る今の着物文化の現状や未来
7.最後にお客様や日本に向けてCarolaさんからメッセージ
ここからはブランカとCarolaさんの対談形式のインタビューでお届けします。
(※英語でのインタビューをブランカが翻訳したものです。)
待ち合わせは平日の昼下がり。アムステルダム市内のオープンテラスのカフェ。
時間通りに来てくれたCarolaさんは 羽織を洋服に合わせてカジュアルに着こなす笑顔が素敵な女性。
1.NATSUKASHII のお店の始まりやきっかけ
ブランカ:まずNATSUKASHII のお店はネットショップですよね。
オランダで始めたと思うのですがスタートはいつ頃ですか?
Carola: スタートは2020年ですね。
ブランカ:今が2023年なので3年ほど前ですね。
Carola: そうです。コロナパンデミックが世界的に流行して本業の仕事が減ったし、
ロックダウンもあって家にいることが増えたの。
その時に大好きな日本の製品を販売するお店をスタートしよう!と思って始めたんです。
昔から日本の工芸品を集めたセレクトショップをやりたいと思っていたので、このタイミングで始めたんです。
ブランカ:カローラさんが日本や日本の製品に興味を持ち出したのはいつ頃ですか?
Carola: そうですね。日本をはじめて訪れたのは2013年です。その頃から一気に好きになりました。
その時は日本の観光地を巡ったり様々な経験をしましたが中でも出会った伝統工芸品の数々や織物や染め物のパターンなどに非常に感銘を受けました。
また日本の伝統工芸を作る職人たちの仕事をその時に見て知って、それも感動したんです。
こんな専門分野の仕事をしている人たちをそれまでに見たことがなかったし、知らなかったので衝撃でした。
ブランカ:本業がグラフィックデザイナーだから余計に興味深く感じるのでしょうね。
Carola: ほんと、そうね。伝統工芸、職人・・あとは絵画も西欧とは全く違う。浮世絵も大好きです。
ブランカ:そうですか!浮世絵といえば、オランダを代表する画家のヴァンゴッホも浮世絵や日本のアートに夢中になったことでよく知られていますよね。
Carola:そうですね。
2. コンセプトや大事にしていること
ブランカ:NATSUKASHII のお店のコンセプトや大事にしていることはどんなことですか?
Carola:私が選んでいい!と思ったヴィンテージの日本の伝統工芸品一点ものを販売しています。
海外(とくに欧州)でもコレクターが多いコケシはNATSUKASHIIショップでも人気の商品。
シンプルでコケティッシュな姿が愛され、「Kokeshi Doll」という愛称で親しまれている。
コケシは東北が発祥の地。 東北人の私としてもなんだか嬉しい。
3.どんなお客様がNATSUKASHIIショップを利用しているのか
ブランカ:NATSUKASHIIのショップを利用しているお客様は実際どんな人が多いのでしょうか?
Carola:それは私も一番知りたい部分よ。ネットショップだとお客様と対面で会うことも話すこともないので どのくらいの年代でどんなバッググラウンドがある人が購入しているのかはがわからない。
だけど大体は40歳〜50歳くらいのオランダやオランダ近隣国の女性が圧倒的に多いと思うわ。
ブランカ:なぜお客様は日本の製品を欲しがるのでしょうね?
Carola:これは私の予想も含みますが彼女たちは日本へ旅行か何かで行ったことがあるんじゃないかな?と思うの。
たとえば羽織などをNATSUKASHIIではたくさん販売していて購入してくれるお客様はジャケットのように着こなしてくれたり、 おしゃれに着てくれます。着物の場合は着付けが特殊だったり、道具が必要だけど羽織りなら洋服と組み合わせがしやすいです。
ブランカ:そうですね、羽織は普段着に合わせて着るのに最適ですね。
ブランカ:ところで仕入れはどのようにしているんですか?
Carola:日本の各地を何度か訪れているので日本人に知り合いで ルートがみつけたので彼らから直接仕入れています。
4.ネットショップNATSUKASHIIがあるオランダについて
<オランダについて>
さてオランダについて馴染みがない人もいるかもしれないのでちょっとここで補足。
オランダは九州と同じくらいの面積。国土の広さは日本の9分の1程度。
オランダの国土面積には干拓地が多く、ほぼ4分の1が海面下にある低地の国です。 オランダの首都はアムステルダム。
オランダで思い浮かべるものといえば皆さんは何でしょうか? 風車…?自転車…?チューリップ…?
あとはマリファ○、飾り窓などちょっと刺激的なオランダをイメージする人も中にはいるのでしょうか。
<オランダの国民性>
これは完全に余談だがオランダの国民性は「個人主義」「他人に干渉しない」という人が多いらしい。
オランダという国は国土面積も小さくてだいたい九州くらいの大きさ。その国土の中には多様な人種が暮らしていて、移民も多い。
文化や人種が混ざり合う国だからこそ他人のことを逐一気にしていても仕方ない。
寛容になろうとした結果の国民性なのか?
もともと「他人の目を気にしないし、自分も深く干渉しない」国民性だからこそ、移民が今のように増えていったのか?
鶏が先か?卵が先か?のような話
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ブランカ:Caloraさんについて経歴を簡単に教えていただけますか?
Carola:私は美大を出ていて、いくつかの会社で働いた後にフリーランスのグラフィックデザイナーとして独立したの。
今もデザインの仕事をしていてその仕事も充実していると同時にNATSUKASHIIショップも開業できたのでもっと日本のクラフトを沢山の人に広めていきたいわ。
日本の着物に描かれている柄や織物、器やこけしなど日本の伝統工芸品がとくに大好きだった。
2013年以降、何度も日本に旅行へ行きその度に職人の工房見学に行ったり、各地をまわって工芸品を見て集めていたわ。
クラフトのワークショップにも何度も参加したわ。
ブランカ:クリエイターさんだ目線で日本の工芸品や伝統工芸に興味が湧いたのですね。
Carola:そうですね。でも残念なことに一部の人達を除いて多くの海外の人は日本の工芸品や伝統についてあまりよく知らないと思います。
でも彼らが日本について全く関心がない、知らない、興味がないのか?というと決してそうは思いません。
世界中で日本食や寿司は大人気だし、オランダにもたくさんの日本食レストランがある。日本の漫画やアニメ、ゲームは大人から子供まで大人気。
だから多くの人たちは日本について「いいイメージ」=「クールジャパン」と比較的ポジティブなイメージを持っている人も多いと思う。
それでも日本の伝統工芸や芸術についてはあまり広まっていないのは残念。
私が少しでも日本の工芸品などの良さを周りの人たちへシェアできたらいいな、そんな思いも込めてNATSUKASHIIショップをスタートさせました。
ブランカ:情熱を感じますね!
5.Carolaさんが語る日本のクラフトや着物の魅力
ブランカ:Carolaさんが思う日本のクラフトや着物の魅力ってどんなところでしょうか?
Carola:まずデザインが面白い。色使いやパターン(模様も)西欧にはない感覚やセンスです。
そしてそれぞれの工芸品に修行を積んだ職人がいて職人たちが手間を惜しまず作っている。
アート、芸術品だと思います。それらがやはり一番魅力的で私が惹かれる部分です。
ブランカ:私も伝統工芸に携わる職人の仕事は本当にリスペクトしています。
6. ブランカとCarolaさんが語る今の着物文化の現状や未来
ブランカ:お店のインタビューとは直接は関係ありませんが、日本人として、着物の仕事に携わる人間として日本の未来に懸念してることがありCarolaさん個人の意見を聞いてみたいと思いました。
日本は今、少子化で子供の出生率は年々下がる一方です。将来的に人口減少は避けられないと言われています。
私は着付けの仕事をしていますが着付けの仕事というのは子供の数にとても大きく影響を受けます。
たとえば、七五三や成人式は子供が減ったらその分少なくなるし、そもそもの未婚率も増加していけば婚礼の和装婚の仕事も当然無くなります。
未来に着物と着付け文化を残したいと思う反面、どんどん若い人が着物に触れる機会や伝統文化にふれる機会がなくなっていると感じています。
この日本の現状をCarolaさんが見てどう感じますか?
Carola:同じような状況は他の国でも起きていると思うけど、子供たちにまず伝統工芸に触れてもらう「機会」や「きっかけ」が必要だと思います。
それにはまず「教育」が欠かせないと思います。
ブランカ:私もそれは同意見です。具体的に聞かせていただけますか?
Carola:オランダでは学校などのカリキュラムでローカルの文化や伝統に触れる授業があります。日本も義務教育の中に伝統工芸や文化を学ぶカリキュラムを取り入れて若いうちから興味の矛先が向くようにするとよいと思いますね
ブランカ:決して日本の教育機関がまったくそのような取り組みをやっていない、とは思いませんがまだまだ不足しているのかな、と現状は感じますね
7.最後にお客様や日本に向けてCarolaさんからメッセージ
ブランカ:今日は海外で日本のクラフトを販売しているCarolaさんの話を聞けていい刺激になりました。
お時間頂戴してありがとうございました!最後に日本の皆様やお客様に向けてなにかメッセージいただけますか?
Carola:大好きな日本のクラフト製品を想いを込めて販売しています!多くの人に日本のクラフトの良さを知ってもらいたいです。もちろん日本の人たちにも!
ブランカ:ありがとうございました!私もNATUKASHIIのショップがもっと広まっていくと嬉しいです!
貴重なお話をたくさん聞かせていただきありがとうございました!
NATSUKASHIIのショップの商品はぜひCarolaさんのインスタグラムからご覧ください NATSUKASHIIのショップはこちらをご覧ください♪ ▶ https://natsukashii.nl/ インタビュー後にアムステルダムの街を二人でお散歩しました。都会でおしゃれな建築物も多いけど、いたるところに緑が多くて気持ちいい街並みがオランダの魅力
この投稿をInstagramで見る
さて今回はブランカの海外視察編ということでオランダで活躍されている現地のCarolaさんから直接お話を聞いた。
日本のクラフト製品に対する理解と造詣をもってお店を運営されているCarolaさんのような人が世界中にいるのだな、と思うと日本人としてありがたく思うのはもちろん、私もどのような形で着物文化を後世へ残していきたいんだろうか・・・・と考えさせられた。
着物のスタイリストとWEBショップオーナーという職業の違いはあれど、伝統工芸とクラフトへの思いは二人共通項が見つかった。
そして海外の人の琴線に触れる日本のクラフトや着物とはどんなものだろう?という疑問と探求はまた深まった。
さらなる海外視察編を続けていきたいものだ。